育休復帰「部下に言われたら面倒」 女性を使い捨てた過去教訓に

有料記事カイシャで生きる

高橋末菜
[PR]

 夕方5時をまわったころ、化粧品会社ランクアップ社長の岩崎裕美子さん(50)はバッグを持つと席を立った。

 「お先に失礼しま~す」

 フロア中に響く声に、社員たちが「お疲れさまでした~」と返す。

 スーパーに寄って総菜を買う。ご飯は朝、炊飯器にタイマーをセットしてきた。家に着くころには、小学4年生の息子がちょうど習い事から帰ってくる。

 2005年に創業したランクアップの主力商品は、メイク落としの「マナラ ホットクレンジングゲル」だ。手のひらに取り、顔になじませると、ぽっと温かく感じる。その不思議な感覚と肌への優しさが女性たちから支持され、通販やドラッグストアなどで大ヒットした。

 今年6月には累計販売数が1千万本超え。30秒に1本が売れている計算だ。11年連続の増収で、昨年の売上高は100億円を超えた。

メールに「お疲れさまです」御法度

 51人の社員うち47人が女性で、その約半数が子育て中だ。岩崎さんは商品開発と同じだけの情熱を、労働時間を減らすことに注ぐ。

 定時は午前8時半~午後5時半だが、仕事が終われば5時に帰ってもいい決まりがある。仕事を覚えるため、新卒の若手社員らが午後8時ごろまで残ることもあるが、多くの社員は定時までに帰る。時短勤務社員を除いたフルタイム34人の1人あたりの残業時間は月10時間ほどだ。

 半年に1度、全員の業務と所要時間を洗い出し、残業が多い社員の業務を見直す。手間のかかるパワーポイントでの資料作りは禁止、言いたいことはA4用紙1枚に。会議は30分で終える。

 全員のスケジュールをオンラインで共有し、打ち合わせなどをしたければ社長の予定にも断りなく入れる。社内メールでは「お疲れさまです」の一言も御法度だ。

 手間のかかる事務作業はシステム化し、コールセンターや発送などの業務はどんどん外部に委託している。

「WLB」という言葉が嫌いだった

 岩崎さんは13年前まで、広告のベンチャー企業で取締役をしていた。

 超長時間労働は当たり前。多くの社員が終電で帰っていた。

 岩崎さん自身、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉が大嫌いだった。

 〈仕事も私生活も充実させたいなんて、売り上げをあげられない社員の言い訳だ〉

 32歳で取締役営業本部長に抜擢(ばってき)された。会社を大きくし、安定させることに使命もやりがいも感じていた。

 でも、社員は居着かない。長…

この記事は有料記事です。残り1184文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら