「大失敗賞」社長も受賞 左遷をしない企業の人事術

有料記事カイシャで生きる

古屋聡一
[PR]

 中小企業の経営者は、左遷についてどう考えているのだろうか。

 グループの従業員が約200人で、機械部品加工などを手がける太陽パーツ(堺市)。社長の城岡陽志(しろおかきよし)さん(69)は「左遷しても大企業は代わりの人材がいるでしょう。我々が失敗のたびに左遷したら、誰もいなくなってしまう」と笑った。

 失敗を恐れずに挑戦する気風をどう作るか。そんな思いから、1998年に創設したのが「大失敗賞」だった。

 第1号の受賞者は、篠川秀樹さん(54)。カー用品を製造販売する新規事業に挑戦した。半年経つと量販店から返品が相次ぎ、約5千万円の損失を出した。売れないと商品が返品される仕組みを理解していなかった。

 篠川さんは落ち込んだ。一緒に仕事をした同僚は、もっと落ち込んだ。社内の雰囲気も暗くなっていた。

 区切りをつける必要があった。城岡さんは「これを糧にして次に挑戦しよう」と、篠川さんを社員の前で表彰した。篠川さんは「なんじゃこれ」とも思ったが、もらった賞金でイルカが好きな同僚と自分のためにクジラのネクタイピンを買った。気持ちを切り替え、「挽回(ばんかい)しよう」と決意するきっかけになった。

 その後、篠川さんは中国工場…

この記事は有料記事です。残り1263文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら