ドア開放・急げば脱線…スローなミャンマーの「山手線」

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文・斎藤健一郎 写真・山本壮一郎
【動画】庶民の味方 JRの列車が走るミャンマー・ヤンゴンの環状線=山本壮一郎撮影
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 列車に乗ると、口が開いたままになった。あるはずのものが、ない。

 ミャンマーの最大都市ヤンゴンの中心部をぐるりと周回する国鉄ヤンゴン環状線は、空港や官公庁、大学、名跡を抱きかかえるように走る。東京の山手線とはいくつもの共通点が見いだせる、はずだった。

 ダウンタウンにあるヤンゴン中央駅から、ないないづくしは始まっていた。まず、東南アジアの大都市の中央駅が放つ喧噪(けんそう)がない。乗客も駅員もスロー映像のように、所作がゆっくりしている。

 改札もない。ニワトリもハトも自由に往来する。午前10時すぎ、ホームへ続く階段をふさぐように、犬が寝入っていた。眠りをさまたげないように乗客はよけて歩く。

 ホームに下りると、線路とホームの高さにほぼ差が、ない。列車の乗降口は見上げるような位置にある。手すりをつかみ、足をえいやと上げ、なんとか車中の人になった。

 いかにも体が重そうな人やお年寄りは――。たちまち多くの手が差し伸べられ、荷物も体も引き上げられるのだった。バリアフリーはないけれど、助け合いがある。

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 車両がブルッとふるえ、「J…

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