いかし、さばく、名人の技 新旧の匠

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抜井規泰
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魚河岸ものがたり:10

 若手が夢をふくらませる一方で、築地の閉場とともに引退するアナゴ名人がいる。仲卸「大雍」の児成孝季(こなりたかき)さん(70)。50年、アナゴ一筋に生きてきた。

 アナゴを商う面白さは、買いつけた素材だけでは味が決まらないことだという。水揚げされ、築地に輸送されて弱り切ったアナゴを、いけすで泳がせ、活(い)きを取り戻す。この仕事を魚河岸では「いかし込む」と呼ぶ。腹の中がきれいになったら、シメて、さばく。アナゴの味は素材だけでなく、うまいアナゴを作っていく仲卸の技が必要だ。

 活きが戻ったアナゴを、「目打ち」でまな板に釘付けにする。目玉に突き刺す道具だが、「かわいそうだからね」。のど元あたりに打ち込んだ。背中から一気に割く。うねるアナゴの動きを予測するかのように刃先を操り、すーっと一気に包丁を引く。外した骨には、一片の身もついていない。

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 「児成さんのじゃないと、ダ…

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