社運かけた新製品で200億円の大損 でもバンダイの社長になれた

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古屋聡一
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 東京ビッグサイトで6月に開催された東京おもちゃショー。約3万5千点が出品された国内最大規模の見本市だ。

 取材の約束をしたバンダイ社長、川口勝(まさる)さん(57)に会いにブースを訪ねたら、担当者に頼まれて、おもちゃのバイオリンに挑戦していた。

 「様子を撮影してもいいですか」

 「ええ、どうぞ!」

 初めて会った川口さんは笑顔の優しい人だった。会社人生で大きな試練を乗り越えたとは想像できない。

 1996年3月。都内の家電量販店を訪ねた35歳の川口さんは「厳しいな」と感じた。営業を担当しているマルチメディア機「ピピンアットマーク」の出足が鈍かった。

 それは、社運をかけた製品だった。米アップルコンピュータ(現アップル)と共同開発した。プロジェクトチームは30代の若手が中心。インターネットができて、ゲームも楽しめる。価格は税別で6万4800円だった。

 嫌な予感は当たった。発売からしばらくたっても、売れ行きは伸びなかった。挑戦の結果は大失敗だった。

「Dダッシュ」からの敗者復活

 「時代が早すぎた面もあると思います」と川口さん。店で申し込んでもらって、消費者の自宅に直接届ける購入方法も不人気だった。

 左遷どころか、「クビになっても仕方ないな」と覚悟した。事業の撤退にともなう損失の総額は、200億円規模に膨らんだ。経営が傾きかねない巨額損失だった。

 しかし、だれも「辞表を用意しろ」と言わなかった。

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 しばらくすると、「ピピン」…

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