同じ認知症だから分かること 相談員、心通わせ私は働く
渡辺康平さんは、通院する香川県三豊市立西香川病院の非常勤職員として働いて1年余りになります。仕事は「オレンジカフェ」の相談員。認知症とわかった時の「どん底」を乗り越え、今は認知症の人やその家族と心を通わせることに生きがいを感じるといいます。
認知症とともに 本人の思い:5
認知症の人が自らの言葉で胸のうちを語る「本人の思い」。特集「認知症とともに」の連載で、原則月1回配信しています。
《病院の敷地内にあるオレンジカフェは金曜午前10時~午後3時。渡辺さんは認知症の人や家族を笑顔で迎え、「まあ、1杯どうですか」とコーヒーを勧める。職員2人とボランティア2人のスタッフとともに、訪れた人の心を解きほぐしていく》
認知症の人の心はガラスのようにナイーブです。僕自身の体験、例えば72歳で認知症とわかった頃の不安や混乱、物忘れはしてもできることを楽しむこと、そんなことを話し、その人が心を開くまでじっくり待つよう心がけています。初めはうつむいていた人が顔を上げ、笑顔になり、語り、行動範囲を広げていく。目の輝きが変わり、自分を取り戻したと感じてもらえた時が最高の喜び。その達成感が生きがいです。
《西香川病院で認知症の人が職員になるのは初めて。病院での雇用は全国でも珍しいという。認知症の本人として発信する仙台市の会社員・丹野智文さん(44)が昨年5月、病院が開いた認知症の啓発行事を訪れた際、渡辺さんの雇用を大塚智丈院長(55)に提案。認知症の人による心理的な支援を考えていた院長の決断で翌月、渡辺さんは妻の昌子さん(75)が運転する車で勤め始めた》
エネルギーあふれる丹野さんの姿に、自分も何かできるのではと勇気づけられました。初めは手探り状態でしたが、以前の仕事や地域活動でいろいろな人の相談にのっていた経験が生きていると感じます。
最初はボランティアでと思ったのですが、「後に続く人のために」という丹野さんや院長の考えを聞き、認知症でも働ける道を開く一歩になればと非常勤職員をお引き受けしました。確かに「仕事」となるとギアのかけ方が違いますね。待っている人のためにちょっと調子が悪くても行かんと、と思う。責任を伴うことがいい緊張感になっています。
パソコンを思うように打てなかったり、長文が読めなかったり、そういうことはあります。でも、相談員として関わることで生き生きと暮らす人を増やし、認知症はこわいという偏見をなくしたいんです。
《認知症の診断は3年前、観…
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