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 東京五輪・パラリンピックを前に、外国人の患者を診察する際に使う医療従事者向けの翻訳機の開発が進んでいる。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)と富士通研究所がつくり、今年度中に発売する。「シクシク」とか「ズキズキ」など様々な痛みや、医療用語にも対応している。

 3月下旬、鹿児島市の米盛病院の看護師伊牟田麻衣子さん(36)が「今のんでいる薬を見せてください」と北京からやって来た60代女性患者に話しかけた。すぐに伊牟田さんの胸に着けられた翻訳機から中国語訳が流れた。患者の応答もすぐに日本語に訳された。

 伊牟田さんは「中国語はわからないので、患者さんと会話するときにとても助かった」と話す。使い始めた当初は薬の名前や「既往歴」などを翻訳できないこともあったが、支払いや病院内の決まりを説明する際には通訳の必要がなかったという。

 翻訳機はNICTと富士通研究所が、東京大学病院の協力を得て開発を進め、3月まで全国の21病院で試用された。NICTが開発した音声翻訳アプリ「ボイストラ」をベースに、専門用語や症状を伝える言い回しを強化。現在は英語と中国語だけだが、2020年までに10言語に対応する。

 「脈絡膜剝離(はくり)が合併症として発症することがあります」「髄膜炎はしばしば他の肺外部位に感染症のない状態において発生します」といった、これまでの翻訳機では難しかった内容も翻訳できるという。

 救急隊員の間では、すでに翻訳機が使われている。総務省消防庁が昨年4月から全国の消防本部に提供している「救急ボイストラ」は、15種類の言語に対応している。だが、膨大な専門用語への対応が必要な医療従事者向けの翻訳機は開発が難しかった。

 専門用語や医療特有の表現は数十万種類に上り、それらすべてを翻訳プログラムに学習させる必要があるという。NICTの隅田英一郎フェローは「誤訳で患者に不利益が起こってはいけない。慎重に開発しているので時間がかかっている」と話す。

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http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(姫野直行)