ありがとう。ありがとう! ありがとう…(小原篤のアニマゲ丼)

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 公開中のアニメ映画「リズと青い鳥」の読み解きの続きです。前回をお読みになった上でどうぞ。あ、ネタバレです。

 久美子のユーフォニアムと麗奈のトランペットの掛け合いを聴いていた希美は放心状態からハッと我に返り「私さあ、本当に音大行きたいのかな?」。一緒にいた優子部長は、またみぞれを振り回すのかと食ってかかりますが、希美の葛藤に薄々気づいていた夏紀副部長が制します。ここから「翻意」した希美の告白が始まります。同時に、生物室では新山先生がみぞれに「覚醒」を促します。希美とみぞれの関係が逆転していく様をカットバック(パラレル・モンタージュ)で見せるこの場面は秀逸です。

 希美は、自分も進路調査票を白紙で出したけど新山先生が声をかけたのはみぞれだけなんだよね、と話します。口調は軽く顔は明るく「いつもの」希美。でも苦しそうにキュッと手に力を込めたり居心地悪そうに足を前後させたりといったカットをはさみ、彼女の苦しい胸の内を伝えます。ここまで重層的で細かな芝居をさせるのかと驚き、興奮しました。自信を持って迷いなく進んでいたようで実は、才能が欲しい、才能があると信じたい、みぞれに負けたくない、でもみぞれにかなわなかった……という執着と羨望(せんぼう)と嫉妬と敗北感が、にじんできます。

 ここでようやく、希美の心が…

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