(ナガサキノート)銀の折り鶴、友の慰霊と平和のために

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岡田将平・36歳
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周防勇さん(1932年生まれ)

 東京都板橋区の周防勇(すおういさむ)さん(85)が、ジュエリーなどをつくる彫金師の道に入ったのは、ちょうどいまから70年前、1948年3月6日のことだった。当時、中学3年、15歳の春だった。4月から高校に進学したいと思っていた。だが、経済的な事情でかなわず、働かざるを得なかった。中学1年の時に原爆が落とされた日から、少年だった周防さんの人生は揺り動かされていた。

ナガサキノートとは…

「ナガサキノート」は、朝日新聞長崎県内版で2008年8月に始まり、2017年1月に連載3000回を超えました。被爆者一人ひとりの人生を、1日に400字ほどの小さな記事で数回から十数回積み重ねて描きます。毎日休むことなく載せ、今も載らない日はありません。デジタル版ではシリーズごとにまとめてお届けします。

 2017年8月、周防さんのつくった銀の折り鶴を初めて見た。目が弱くなりながらも、原爆の犠牲となった同級生を慰霊するためにつくり、遺族に贈ったものだ。指先ほどの大きさの精巧な折り鶴が輝いていた。思いの深さと技術の高さに心を打たれた。

 いまも、周防さんは折り鶴をつくり続けている。自身の体も焼かれ、消えることのない「あの日」の記憶、弟子入りの日から70年間磨いてきた腕への誇り、そして平和への願い。小さな折り鶴は、周防さんの生きてきた道のりを浮きたたせる。

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 周防さんは、稲佐山のふもと…

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