5カ月の娘、最後の笑顔 うつぶせ寝「教訓生かして」

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編集委員・大久保真紀
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小さないのち 悲しみと歩む

 生後5カ月のさつきちゃんは、ベッドの上でゆれるおもちゃを初めてつかみ、にっこり笑った。あまりにご機嫌だったので、母親は携帯電話で撮影した。2010年11月16日朝の幸せな時間。まさか、最後の元気な写真になるとは思わずに。

 大阪府八尾市に住んでいた母親の藤井真希さん(38)は出産後も、妊娠中から続くひざの痛みに苦しんでいた。治療に行く間のさつきちゃんの託児先を探し、市のファミリー・サポート・センター事業(ファミサポ)で紹介された近所の女性宅に預けた。2回目の利用だった。

 約1時間の治療を終え、迎えに行くと、さつきちゃんは床の上でぐったりとしていた。心肺停止状態だった。なぜ? ついさっきまであんなに元気だったのに……。体の震えが止まらなかった。

 救急搬送されて蘇生したものの、医師からは「脳死状態」と言われた。藤井さんによると、預けた女性は事故直後、うつぶせ寝にしていたと話したという。

 闘病生活が始まった。さつきちゃんはその後、医師の予想に反して投薬なしで尿の量を調整できるようになった。「この子は生きている!」。夫の朋樹さん(38)、両親らも協力して支えた。

 意識は回復しなかったが、12年には転居した大阪府内の自宅で在宅医療を始めた。子ども用の車いすでお花見に出かけたり、温泉旅行に行ったり。誕生日にはケーキのクリームをさつきちゃんの鼻につけて祝った。苦しくもあったが、家族として楽しい、大切な時間を重ねた。さつきちゃんのピンクの頰や柔らかな手は生きている証しだった。

 しかし、13年10月、さつきちゃんは意識が戻らないまま、自宅で3年4カ月の命を閉じた。

朝はご機嫌で笑っていた5カ月の娘は数時間後、託児先でぐったりしていた。意識が戻ることはなく、3歳で命を閉じた。なぜ娘は死ななければならなかったのか。同じことを繰り返してほしくない――。母親は同じ悲しみを抱える遺族を支え、より安全な保育が行われる社会に向けて活動を始めた。

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 藤井さん夫妻は娘が心肺停止…

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