「名人をこす」夢への第一歩 将棋界の頂点に真っ向勝負

有料記事

村上耕司
[PR]

 将来の夢は「名人をこす」。藤井聡太五段(15)が小学4年生の時に小学校の文集に書いた言葉だ。「当時はまだ小学生だったので……。いま振り返るとすごいことを書いたなと……」。この時のことを聞かれ、藤井五段ははにかみながら振り返った。

 「名人」は将棋界で最も伝統のある称号だ。江戸時代から世襲や推薦で受け継がれ、実力者同士が戦って奪い合うタイトル戦になったのは昭和に入ってから。1937(昭和12)年、故木村義雄十四世名人が実力制初代名人になってから約80年、名人になったのはわずか13人しかいない。そんな重みを小学生にして分かっていたのだろうか。まるで、「名人に香車を引いて勝つ」と物差しの裏に書き残して家を出た故升田幸三・実力制第四代名人を思い起こさせる。

 まだ四段だった先月、藤井五段にその名人と公式戦で戦うチャンスが巡ってきた――。名古屋市の東桜会館で行われた第11回朝日杯将棋オープン戦の本戦2回戦。相手は名人戦2連覇中の佐藤天彦名人(30)だ。藤井五段と同様、若くして才能を発揮した逸材。藤井五段が現役のタイトル保持者と公式戦で対戦するのは初めてで、いきなり棋界の頂点である名人と相まみえることになった。

 佐藤名人は5歳でルールを覚え、10歳でプロ養成機関の奨励会に入会。14歳で三段に上がり、2006年10月に18歳でプロとなる四段に昇段した。順位戦では初参加から8年でA級に上ると、1期で名人挑戦権を獲得。初挑戦の名人戦七番勝負では羽生善治名人(当時)を4勝1敗で破って、28歳で名人位に就いた。まさに藤井五段がこれから目標とする道筋を一足早く駆け上がった一世代上の先輩でもある。

 今をときめく中学生棋士と現役名人との対戦。しかも公開対局とあって、対局場には多くの将棋ファンや報道陣が詰めかけた。

 朝日杯は持ち時間がそれぞれ40分の早指し戦。序盤でじっくり考える余裕はなく、互いに指し慣れた戦型に持ち込みたいところだ。約180人のファンが見守る中、先手の藤井五段が初手▲2六歩と突くと、佐藤名人が△3四歩と応じて、「横歩取り」の戦型に進んだ。

ここから続き

 藤井五段はこの戦型を公式戦…

この記事は有料記事です。残り961文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら