恐怖支配「やりすぎるな」 障害者施設、被告が語る

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若井琢水
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 知的障害者向けの福祉施設で、職員による入所者への暴行事件が起きた。障害者が安全に過ごせるように見守るはずの施設で起きていたのは、入所者への恐怖支配だった。

 11月20日、宇都宮地裁宇都宮市社会福祉法人「瑞宝会」が運営する障害者施設で、入所者が暴行を受け大けがを負った事件で、傷害や暴行の罪に問われた同会元職員松本亜希子(25)=宇都宮市石井町=と、傷害の罪に問われた無職佐藤大希(22)=那須町湯本=の両被告の初公判が開かれた。元柔道選手の松本被告は大柄だ。

 「間違いありません」。裁判官に認否を問われると、2人は起訴内容を認めた。

 起訴状によると、2人は共謀し、4月15日午後6時ごろ、知的障害者施設の入所者の男性に、足蹴りするなどの暴行を加え、腹腔(ふくくう)内出血や腰椎(ようつい)骨折など、6カ月の大けがを負わせた、とされる。また、松本被告は、栃木市の障害者施設でも、入所者の女性に平手打ちなどをしたとされる。

 冒頭陳述や公判などから事件をたどる。

 松本被告は、柔道の有段者で2014年3月、柔道関係者の紹介で瑞宝会に入社した。障害者福祉について学んだ経験はなく、入社後も研修を受けないまま、宇都宮市内の知的障害者施設に配属された。

 施設では、日々、入所者が指示に従わなかったり、暴れたりすることがあった。松本被告は入所者たちに次第にいらだちを募らせ、他の職員に相談したが、「仕方がない」と言われるだけだった。

 施設では職員による暴力は日常的で、入所者は暴力を恐れ、職員の指示に従っていたという。その様子を見て、松本被告も平手打ちなどの暴力を振るうようになった。大柄で力のある松本被告は入所者から恐れられるようになり、松本被告が手を上げると、おとなしくなる入所者もいたという。

 佐藤被告は施設利用者の一人だったが、16年3月から研修名目で働くようになった。暴力を振るう松本被告の指示に入所者が従う様子に憧れ、まねて入所者に平手打ちをするようになったという。暴行を見かけた他の同僚からも「やり過ぎるなよ」と言われただけだったと振り返る。

 事件は松本被告が施設で働き始めて3年を経た4月15日に起きた。入所者がテレビを見て過ごす訓練室で、午後6時ごろ、突然大声を出して暴れ始めた女性入所者に、男性入所者がつかみかかった。

 佐藤被告が止めにかかったが…

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