スシロー愛の記者ははがゆく思う 冬の新作回転ずし発表

北林慎也
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 回転ずし最大手のあきんどスシローは13日にあった事業戦略発表会で、今冬以降に投入する新作メニューを発表した。今年3月の再上場で気を吐く最大手らしい隙のない完成度と、それゆえに皮肉な寂しさも感じてしまうラインナップのお披露目だった。

 スシローを傘下に持つスシローグローバルホールディングス(大阪府吹田市)は、2017年9月期決算で、売上高が前年比5.9%増の1564億円と過去最高だった。ライバルチェーンが定額食べ放題などの工夫で追い上げを図る一方で、スシローは本道のメニュー拡充に重点を置き、引き離しにかかる構えだ。

 この日の発表会では、羽田空港を中心とした空輸による鮮魚流通網を持つベンチャー企業との資本業務提携を報告。その空輸網を生かし、長崎県産「剣先いか」や北海道産「生甘えび」など、国内産の天然ネタの販売を始める。世界中の漁場からの直接仕入れで、大ぶりの定番ネタを安価にそろえた昨年からの継続企画「世界の海からいいネタ100円PROJECT」でも、「特上赤身」「塩いくら包み」の2種を追加。さらに、スシローが得意とする有名スイーツ店とのコラボ企画では、都内や横浜市内で小規模展開する人気専門店が監修したアップルパイを税抜き280円で提供。社内横断プロジェクトとして、スイーツ好きの社員らが「スシローカフェ部」として商品企画に携わったという。レギュラーメニューのコーヒーも味に改良を加え、デザートセット感覚で一緒に注文しやすくした。

 今月から徐々に提供されるこれら新作ラインナップの振り幅の広さは、相変わらずの見事さ。ちなみに、スシローのメニューで筆者が最も感心するのが、見た目はなんの変哲もない、既製品の「懐かしのメロンシャーベット」(税抜き100円)。大人にとっては郷愁を誘い、幼児にとっては舌先でふんわりとけるシャリシャリ感がたまらないらしく、世代を越えて支持される定番デザートだ。家族連れの注文で、緑色の丸いカップが何個も並んでレーンを流れるさまは、かわいらしくてほほえましい。今回の新作からも、そんな定番人気メニューが生まれるかもしれない。

 ただ、過剰と言いたくなるぐらい豊富なメニュー料理に比べて、いつも物足りなく感じるのがアルコール飲料のメニューだ。特に、旬のネタを肴(さかな)にぐい飲みしたくなる日本酒は、日本盛吟醸(税抜き380円)の1種のみ。利き酒が楽しめるぐらいに日本酒の選択肢が増えれば、家族連れ以外のシニア夫婦やサラリーマンにも、客層が広がりそうな気がする。発表会の場でスシローの水留浩一社長に聞くと、「すぐに、というわけではないが、ぜひ取り組みたいと思っている」とのこと。ここはぜひ採算度外視で、居酒屋業態をのみ込むぐらいのお酒の充実を期待したい。ぬる燗(かん)が合いそうな冬の新作すしは、思わずそんなムチャぶりをしたくなるぐらいの仕上がりだった。(北林慎也)

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