記者殺害、海外でも 社会に暗雲「彼が生きていれば…」

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千種辰弥
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 小尻知博記者(当時29)が殺され、記者1人が重傷を負った朝日新聞阪神支局襲撃事件から、5月3日で30年。記者殺害は今、海外で多発している。記者がギリシャメキシコを歩き、背景を探った。

明日も喋ろう:1 @ギリシャ

 布団にくるまったホームレス、コップを片手にうずくまる物乞い、電車内でアコーディオンを弾き、小銭をせびる少年――。

 深刻な不況にあえぐギリシャでは、困窮した人たちをあちこちで見かける。

 きっかけは、2009年の政府による財政赤字のごまかしの発覚。翌年起きた事件は、暗い時代の到来を予感させた。

 7月19日早朝、アテネ郊外の住宅地に銃声が響いた。撃たれたのはソクラティス・ギョリアスさん(当時37)。十数発の銃弾を浴び、息絶えた。ニュースサイト「トロクティコ」の記者だった。

 政治や社会の問題を鋭く切る人気サイト。前日にこう書き込んでいたという。「明日、ある資本家のスキャンダルを発表します」

 地元紙などによると、自宅マンションで、呼び鈴を押した男に「車が盗まれそうだ」と誘い出され、玄関で撃たれた。部屋に妊娠中の妻と2歳の息子がいた。

 テロ集団を名乗る犯行声明文が、地元の新聞社に届いた。だが、いまだに犯人は捕まっていない。

 「彼が生きていれば、意見をともにする人が一つになり、国を良くすることができたのに」。ジャーナリストのアレキサンドロス・ステファノプロスさん(51)は惜しむ。

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 2人は同じ修道院で学び、テ…

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