「記者の聖域」でも凶行 表現の自由求め、世界から署名

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森田貴之
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明日も喋ろう:7 @メキシコ

 首都メキシコ市の中心街から車で約15分。黄色やピンクのカラフルな家が立ち並ぶ住宅街の一角に、6階建てのアパートが見えた。ここで1人のジャーナリストが殺された。

 2015年7月31日、4階の一室で、週刊誌「プロセソ」のフォトジャーナリスト、ルベン・エスピノサさん(当時31)が頭を撃ち抜かれるなどした状態でみつかった。

 約2カ月前まで、東へ200キロ以上離れたベラクルス州に住んでいた。同僚記者の殺害の関与を追及するなど、州政府を批判する記事を書き続けた。友人で同誌記者のノエ・サバレタさん(36)は「そうした記事が事件の背景にある」とみる。

 エスピノサさんは不安を口にしていた。何者かにつけられたり、写真を撮られたりしている。街角で男から、殺された同僚記者の名を告げられ、「死にたくなければ、写真を撮るな」と脅された。それを機にメキシコ市へ「避難」した。しかし、執拗(しつよう)に狙われた。

 「記者にとって最後の安全地帯」。メキシコ市は報道関係者らの間でそう呼ばれる。同誌記者のホセ・ヒルさん(55)は「実際、地方で脅迫された記者が多く避難している」と話す。

 約10年前から政府とマフィアの攻防の激化に伴い、記者の襲撃が相次ぐ。米国のNPO「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ)によると、昨年までの10年間で殺された記者は61人。このうち、首都ではエスピノサさんだけだった。

 安全な場所がなくなった――。報道関係者の間で衝撃が走った。

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 メキシコ市やベラクルス州な…

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