忖度報道「まるでホラー」(襲撃30年 明日も喋ろう)

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阿久沢悦子
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報道の「自己規制」描いた劇作家、永井愛さん(65)

 今年1月から3月にかけ、「ザ・空気」と題した芝居を全国11カ所で公演しました。テレビの報道局でその日放送する予定のニュース特集が、試写を見た上層部からの注文を受けたり、現場が上司の意思を忖度(そんたく)したりして、徐々に内容を変えていく物語です。

 戯曲を書くきっかけは、昨年2月の高市早苗総務相の「電波停止」発言。放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、大臣が電波停止を命じる可能性に言及しました。その後、国際NGOの「報道の自由度ランキング」で、日本は72位まで順位を下げました。

 なぜこんなことに? 報道関係者が書いた本などを手がかりに調べ、テレビ局の方にも取材しました。放送免許の許認可権を政府が握るなどいまのメディアが置かれた状況で、上層部がもし極端な編集方針を出したら、一記者の良心だけであらがえるか。普段は「圧力を感じない」という記者も「社内の空気を読むことはある」と言いました。ここに「自己規制」が始まる素地があると思います。

 観客からは「まるでホラー。血も出ないし、暴力もないけど怖い」という反応が多かった。マスコミで働いていなくても、みな、思い当たる部分があるのでしょう。「“お察し機能”が搭載されていない人はダメ」という日本の風潮は根強いのでは。だから、忖度に忖度を重ねる。その危険性は誰にでもあります。

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