(京の隠れ里に住んで)シカと暮らす山里の生活

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福野聡子
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 京都市中心部から車で約1時間、市最北端にある久多(くた)。山々に囲まれた、約90人の小さな集落です。野生鳥獣による農作物被害は他の山間部と同じく、大きな悩みです。サルがあまり姿を見せない冬から早春、一番身近な動物はシカ。野生動物「最前線」の山里で、狩猟も含め、シカとどう関わっているかの一端をお伝えできればと思います。

     ◇

 シカといえば、奈良や宮島――。以前は、観光地の遠い存在でした。今は夜、何かの気配に気づいて家の外を見ると、人ではなくシカ。作物や苗木を食べられる一方、「山の恵み」として命をいただく。切っても切れぬ「生活の一部」となりました。

 そんなシカのことをもっと知りたいと2月下旬、京都市であった「ニホンジカの生態と被害対策」の勉強会へ。「左京区獣害対策チーム連絡協議会」の研修会で約40人が参加しました。専門家からは、府内でシカの頭数が増え続けている現状が報告されました。金網やネットの高さは2メートル以上に▽くぐられないように工夫▽網目は10センチ以下――など具体策の紹介も。出席者からは次々に質問が出され、問題の深刻さがうかがえました。

証拠のフンが

 この冬は、地元でも「20年に1度」の大雪。庭先計測で最大160センチを超えました。植物が埋もれ、シカにも厳しい冬だったようです。2月中旬から3月初め、人家のすぐそばの川べりなどで座り込んでいるシカをよく見かけました。

 最近は雪が減り、庭木にも早速被害が。石垣にある茶の木の葉っぱが食べられ、近くには「証拠」のフンが固まって落ちていました。

狩猟免許を取得

 「昔は家の近くでシカを今ほど見かけなかった」と地元の方からよく聞きます。山に人が入らなくなったり、耕作放棄地が増えたりと、理由はいろいろ考えられますが、久多でも野生のエリアが広がっている印象です。

 ネットや金網などの防除策だけでは、作物を完全に守るのは難しいと実感。そこで、夫と2人で狩猟免許を取得することにしました。私はわな猟の免許を取り、とれたシカをさばくなどの手伝いをしています。

 狩猟免許は散弾銃などを使う第1種銃猟、空気銃の第2種銃猟、わな猟、網猟の4種類。一時は第1種銃猟も、と猟友会の講習会をのぞきましたが、重い銃を扱う根性が今の自分にはないと判断、断念しました。

 夫は試験に合格、銃の所持許可を受けました。許可前、警察によるご近所への調査や家庭訪問も。「DVは受けていませんか」という質問にはびっくりしました。

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 なお、実際の猟には都道府県…

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