(関西食百景)鍋の友、苦みもうまみも

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文・岩佐友 写真・細川卓
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大阪・泉州の春菊

 ガラッと扉を開けると、淡い緑の葉がじゅうたんのように広がっていた。8棟が連なったビニールハウスの室内には春菊独特の苦みを伴った香りが漂う。

 「寒さで成長に時間がかかる分、葉が肉厚。歯ごたえと風味が増して、一番おいしい季節です」。大阪府貝塚市三ツ松で「西阪農園」を営む西阪和正さん(29)は語る。鍋に欠かせない食材として、冬に存在感を示す。

 大阪府は2015年の春菊の収穫量が3710トンで千葉県に次いで全国2位。特に大阪南部の泉州地域は水はけの良い土壌で、春菊の栽培に適しており、府内の生産の大半を占める。夏は水ナスの産地で知られる貝塚市では、冬にも農地を有効活用できる作物として約30年前から春菊の生産量を増やしてきた。

 8代続く西阪農園では和正さんの亡き父吉広さんが春菊づくりを始めた。堆肥(たいひ)に自家栽培米のもみ殻を混ぜるなど土づくりにこだわり、1年中栽培する。種をまいてから夏は1カ月、冬は2カ月半程度で収穫。父の後を継いで10年、自信を持てる春菊が作れるようになってきた。

 「柔らかく、独特の苦みが少ない。火を通さず食べられます」と西阪さん。そのままいただくと、苦みよりも甘さを含んだうまみがふわっと口の中に広がった。素材を生かした生の食べ方が、いま広がりつつある。

サラダで主役 生ならではの甘み

 朝露の水だけで育てる。大阪府貝塚市三ツ松の西阪和正さんのハウスでは12~1月にはあえて水をやらない。「甘やかすだけじゃなく、厳しく育てないとすぐ傷む。人間と同じです」。年6回種をまくが、品種や肥料、水やりの頻度は毎回異なる。ノウハウをベテランの生産者から学び、応用させた。

 春に花を咲かせるキク科の春菊。安全性に自信がある。貝塚市を含むJA大阪泉州の管内のほとんどの生産者が農薬と化学肥料の使用量を通常の5割以下に削減して栽培し、府が認める「大阪エコ農産物」に指定されている。営農経済部販売課の中司賢吾さん(33)は「安心安全でおいしい春菊を一丸となって求めてきた。だから生でも自信を持って食べてもらえます」と言う。

 え、春菊を生で食べる?

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