(関西食百景)天日に透ける身 脂蓄え

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文・井潟克弘 写真・井手さゆり
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島根・浜田のカレイ

 日が差すと、独特の平らな魚体が透けて見えた。島根県浜田市の水産加工会社「多田商店」の屋上。一夜干し向けのミズガレイ数百匹が、寒風にさらされていた。浜田漁港で水揚げされたミズガレイは体長約25センチ。おなかの部分がピンク色に膨らんでいるのは卵を持つ雌だ。冬は産卵前で脂がのっている。

 社長の多田勝和(よしかず)さん(59)は「お日様が一番。洗濯物と一緒だよ」。早朝に競り落とし、内臓やうろこを取って塩水に約1時間半浸す。冬の山陰は好天の日が少ない。経験と勘で、わずかにのぞく晴れ間を狙って一気に干す。その作業は半世紀以上変わらないという。仕上げに乾燥機は使うが、日に当てると乾きが違う。「味わいも深まる」と信じている。

 浜田の代表的な魚と言えば、ノドグロのイメージが強いが、市はノドグロのほかにアジとカレイをブランド化して売り込んでいる。そのカレイの干物作りの県生産量は、全国シェアの4割に当たる約3千トンで、大部分は浜田産。プランクトンが多い海域で育ったカレイは肉厚なのが特徴だ。

 沖合底引き網漁でカレイは最も多く取れるが、足が早い弱点があり、知名度の部分では取り残されてきた。最近は鮮度管理技術の向上で、刺し身でも味わうことができるようになった。

淡泊、モチモチ、船内に鮮度の決め手

 1月下旬、未明の浜田漁港。身を切るような冷え込みの中、沖合底引き網漁船から、次々と魚が水揚げされていた。船上で大きさや種類ごとに選別され、箱に入った状態で運ばれる。

 マダイやヒラメ、フグ、アジなどに交じり、大小様々なカレイもあった。水揚げされたカレイは手のひらサイズから40センチ以上まで計8種類。午前6時から始まった競りでは、主に小型サイズは干物用、大型は飲食店向けに次々と競り落とされていった。

 片隅にある大ぶりのミズガレ…

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