夏目漱石「吾輩は猫である」199

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 「それが天才だよ。天才でなければ、そんなに思い込める訳のものじゃない。羨(うらやま)しい。僕もどうかして、それほど猛烈な感じを起して見たいと年来心掛けているが、どうもいけないね。音楽会などへ行って出来るだけ熱心に聞いているが、どうもそれほどに感興が乗らない」と東風君はしきりに羨やましがっている。

 「乗らない方が仕合せだよ。今でこそ平気で話すようなもののその時の苦しみは到底想像が出来るような種類のものではなかった。――それから先生とうとう奮発して買いました」

 「ふむ、どうして」…

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