夏目漱石「吾輩は猫である」197

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 「土地柄が既に土地柄だのに、私の国のものがまた非常に頑固(がんこ)なので、少しでも柔弱なものがおっては、他県の生徒に外聞がわるいといって、むやみに制裁を厳重にしましたから、随分厄介でした」

 「君の国の書生と来たら、本当に話せないね。元来何だって、紺の無地の袴(はかま)なんぞ穿(は)くんだい。第一(だいち)あれからして乙だね。そうして塩風に吹かれ付けているせいか、どうも、色が黒いね。男だからあれで済むが女があれじゃさぞかし困るだろう」と迷亭君が一人這入(はい)ると肝心の話はどっかへ飛んで行ってしまう。

 「女もあの通り黒いのです」…

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