「死んでやる」包丁と怒声の中で保護(児相の現場から)

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第1章:一時保護(1)

 「いま夫婦げんかしている。子どもが巻き込まれるから、保護してほしい」

 けんかをしている真っ最中の母親から児童相談所(児相)に電話があった。子どもは3歳と赤ちゃんという。

 児相内で、安全確認や一時保護など虐待の初期対応にあたるチームから、ワーカーと呼ばれる児童福祉司のケイコ(仮名)とミエコ(仮名)が急行した。30代のケイコはチームに入って4年目。40代のミエコは2年目、保育士の資格を持ち、障害者福祉施設の現場などでの経験が長い。

 2人が到着すると、母親が赤ちゃんを抱えたまま父親とののしりあい、もみ合っていた。赤ちゃんを受け取ろうと2人で手を出すと、父親がすごんだという。

 「連れていくな。帰れ!」

 虐待などで子どもが危険な状況にあると判断すれば、児童相談所は子どもを一時的に親から引き離す「一時保護」に向かう。その現場では、児相の職員たちの身が危険にさらされることもある。

 夫婦は家の外に出てきて、取っ組み合いを始めた。夫婦に赤ちゃんを傷つける意図はないが、何かの拍子に赤ちゃんがけがをする可能性は否定できない。ケイコもミエコも必死だった。もみくちゃになりながらケイコが何とか赤ちゃんを確保し、その場を走り去った。

 今度は父親が母親の首を絞め…

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