(核リポート)ご当地電力革命、造り酒屋の当主が挑む

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小森敦司
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 原発への依存から脱し、再生可能エネルギーのうねりを起こそうと、国内外の再エネ関係者が集う「第1回世界ご当地エネルギー会議」が11月3、4両日、福島市のコラッセふくしまで開かれる。実行委員長の一人で「全国ご当地エネルギー協会」代表理事の佐藤弥右衛門・会津電力社長は、会津・喜多方市で200年以上続く造り酒屋の9代目当主だ。そんな「旦那」が、5年前の東京電力福島第一原発事故の後、再エネ拡大に取り組んでいる。会津の豊かな自然でエネルギー革命を起こし、地域の自立を果たしてみせる――。その熱い思いを聞いた。

水も燃料も豊かな会津

 ――先代の8代目は、「蔵の町」の町並み保存に尽力されたそうですね。

 「喜多方は、養蚕や製糸業、醸造業などで栄えました。男は、三つの蔵を建てて、初めて『旦那』と呼ばれるような土地柄です。ところが戦後、車社会が到来すると、それらの蔵が次々につぶされ、アーケードや駐車場になっていきました。そこで、おやじは蔵の復元に動き出すんです。奇人と言われました」

 「大量生産の酒を景品付きで売る大手に対抗するには、蔵できちんと対面販売しなければ、という考えもあったようです。東京の大学から実家に戻った私も、おやじに命じられて金策に駆けずりまわりました。大丈夫かと思いながら。でも、そんなおやじらの取り組みが当たるんですね。黒漆喰(しっくい)や白壁の美しい風景にひかれて、観光客が来るようになりました」

 ――それが「喜多方ラーメン」のブームにもつながったとか。

 「ここは穀倉地帯で、しょうゆやみそなどの醸造業も盛んです。もちろん水もいい。だから、しょうゆ味の透き通ったうまいつゆができた。1985年のことですが、NHKが『ラーメンの香りただよう蔵の町』と放送してくれて、一気に観光客が増えました」

 「『四方四里』という言葉を知っていますか? 人間が足で歩ける四里(約16キロメートル)で育ったものを食べ、生活するのがよいという考え方です。この地では、米、麦、大豆はもちろん、山菜やキノコが採れる。清流が水車を回し、薪(まき)も燃料の炭にします。つまり、食料も水もエネルギーもある。豊かなんですね」

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■奪われてきた自然資源…

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