母の介護、心が折れるとき(わたしの思い 鳥居りんこさん:2)

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聞き手・坂本真子
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 エッセイストの鳥居りんこさんに、親の介護に奮闘している10年余りの日々を語っていただいた連載の2回目です。毎週木曜日に配信、全4回の予定です。

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 母の介護で、私が一番きついのはメンタル面です。行政や老人ホームの書類の手続きといった事務作業もありますが、それよりもメンタルです。

 この前、母を落語に連れて行きました。外出先でのトイレ問題は深刻で、自力歩行が難しい人を連れ出すのは大変なんですが、たまには外の風を感じてもらおうと、一大決心をして一緒に外出したのです。

 でも母は「あなたが行きたかったんでしょ? 来られて、良かったわね(私はあくまでお付き合いしてあげたの。あなたは私のお金で楽しめてよかったわね)」と言いました。

 ここで私がお金を出せば私の完全勝利ですが、そこまですると逆にかわいそうなので、「お金を出してくれてありがとう」と母に伝えました。

 私が欲しいのは「今日は連れてきてくれてありがとう。本当に楽しかった」という一言だけなんですが、実際の母は「楽しい思いをさせてあげたエライあたくし」という立ち位置。期待したような言葉など全くありませんでした。そういう母の言葉に、わかってはいてもどんどん心が折れていくんです。

 少し前に母のいる老人ホームで、母と94歳の女性が話していました。「息子には愚痴は言えないけど、娘には何でも言えるから本当に楽よね。娘を産んどいて本当に良かったわ」。娘は母のうっぷんやら愚痴のすべてを吸収するゴミ箱で、自分の分身として娘を育てた、と二人で意気投合していました。

 私は、姉と兄との3人きょうだいで、母は「長男教」です。一度、「そんなにお兄ちゃんラブで私に文句を言うなら、お兄ちゃんのところに行けば?」と聞いたら、母は一言、「そんなご迷惑はおかけできない!」と。

 ここまで言い切ったら逆にあ…

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