認知症で万引き、割れる司法判断 家族が気づけない例も

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塩入彩
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 万引きで罪に問われた人が、認知症を発症していると診断されるケースが増えている。「前頭側頭型認知症」と呼ばれ、衝動的に行動してしまうのが特徴の一つだ。ただ、社会的にはまだ知られておらず、繰り返し罪を重ねる中で、裁判で実刑判決を受けることもある。司法の判断が割れるなか、弁護士らは地域ぐるみで患者を支えることが必要だと指摘する。

 「お母さん、認知症かもしれませんね」

 東京都内に住む会社員女性(24)は昨年夏、母親(62)を診察した医師から認知症の可能性を指摘された。母親は昨年4月に地元のスーパーで靴など9点を万引きし、東京地裁での裁判を控えていた。

 万引きをするようになったのは、10年ほど前からだ。おにぎりや栄養ドリンク……。2年前にも万引きで執行猶予付きの有罪判決を受けた。

 経済的に困っておらず、盗んだ理由を聞いても「なんで取ってしまったか分からない」と言うばかり。女性は母親の行為を理解できず、「許せない気持ちが強かった」という。

 医師の指摘に、思い当たる節もあった。以前はきれい好きで料理も得意だったのに、10年ほど前から部屋の片付けができなくなり、同じような料理ばかり作るようになっていた。

 昨年4月の万引きについての一審の裁判には診断が間に合わず、認知症という主張ができないまま母親は実刑判決を受けた。判決後の専門医の検査で初めて、母親は脳の前頭葉側頭葉が萎縮する「前頭側頭型認知症」だとわかった。母親の場合、前頭側頭型のなかでも「ピック病」と呼ばれる症状だったという。

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