夏目漱石「吾輩は猫である」68

有料記事

[PR]

 「そうかな、何だか上品で、気楽で、閑暇(ひま)があって、すきな勉強が出来て、よさそうじゃないか。実業家も悪くもないが我々のうちは駄目だ。実業家になるならずっと上にならなくっちゃいかん。下の方になるとやはり詰らん御世辞を振り撒(ま)いたり、好かん猪口(ちょこ)を頂きに出たり随分愚(ぐ)なもんだよ」

 「僕は実業家は学校時代から大嫌(だいきらい)だ。金さえ取れれば何でもする、昔でいえば素町人(すちょうにん)だからな」と実業家を前に控えて太平楽を並べる。

 「まさか――そうばかりもい…

この記事は有料記事です。残り1306文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら