夏目漱石「吾輩は猫である」62

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 「困るの、困らないのってあなた、私しゃこの年になるまで人のうちへ行って、あんな不取扱(ふとりあつかい)を受けた事はありゃしません」と鼻子は例によって鼻嵐(はなあらし)を吹く。

 「何か無礼な事でも申しましたか、昔しから頑固(がんこ)な性分で――何しろ十年一日(じつ)の如くリードル専門の教師をしているのでも大体御分りになりましょう」と御客さんは体(てい)よく調子を合せている。

 「いや御話しにもならん位で…

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