(関西食百景)交配実り ええとこドリ

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文・石倉徹也 写真・遠藤真梨
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奈良の大和肉鶏

 剣豪の里として知られる奈良・柳生は、山間の狭い盆地にのどかな田園風景が広がる。

 山のほとりの飼育小屋に入ると、鶏が一斉にこちらを向いた。出荷間近の大和肉鶏だ。名古屋コーチンと外来種にシャモをかけあわせた種。シャモの血筋ゆえに気性が荒い。互いに目が合い興奮せぬよう、小屋の中は薄暗い。鶏を小屋から出すのは、しめる直前だけだ。

 「ストレスをかけないことで、脂がのって味が濃い鶏肉を生むんです」。養鶏場「雅 chick farm(みやびチックファーム)」を営む中家雅人さん(36)は鶏を驚かさないよう小声で話した。

 朝昼晩、羽やふんの色を丁寧に見て回る。小屋の床には殺菌効果があるとされるヒノキの粉をまく。ブランド鶏の質を保つためトウモロコシや米などの指定飼料を使うルールだが、付け足すのは工夫のしどころだ。整腸作用のある菌を発酵させた飼料を混ぜるのが中家流。食欲が増し、健康な鶏に育つという。

 裏山にはシカやイノシシが姿を見せる。「静かで空気がきれい。鶏の成長にちょうどいい」。135日ほど育てると、コーチンのうまみとシャモの歯ごたえの「ええとこどり」の味が生まれる。

 成長したオスを小屋から出してもらった。バサッ。広げた茶褐色の羽が鮮やかに輝いた。

うまみ・歯ごたえ 地鶏ブームの先駆け

 大和肉鶏は「朝びき」が一番。料理人はそう口をそろえる。店に出す夕方、半日の熟成を経てうまみがのってくる。

 午前5時、「雅 chick farm(みやびチックファーム)」の中家雅人さん(36)が、育てた鶏をしめ始めた。ナイフで血抜き後、湯に浸してから毛を抜き氷水へ。養鶏家自らしめるのは珍しい。「愛情込めて育てた鶏やから責任もって送り出したいんです」

 電機メーカーの工場で15人を束ねる基板製造の責任者だった。8年働いた33歳の時、奈良県の農業支援事業を知り、養鶏の門をたたいた。昔からいつか農業を、と考えていた。

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 養鶏場を渡り歩いて修業する…

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