ゲイへの理解、求めた直球 「弟の夫」(田亀源五郎)

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松尾慈子】最初に、書店で本作の表紙を見て驚いた。「弟の夫」。あまりにストレートなタイトル。そして、田亀テイストそのものの、ガチムチの男性たち。なのに、なんだかいつもの田亀と違う。「え、これ、田亀さんだよね? あれ、こんなにソフトな絵柄で、あれ? 青年誌『月刊アクション』に掲載されてるの!? すごい!!!」。まずは感嘆であった。そして、読んでまた嘆息。すごい。ゲイ・エロチックアーティストの、あの田亀源五郎が、男女を問わず幅広い世代に届くように、ゲイへの理解を求めて描いた作品だと私は受け止めた。この田亀からの直球を、多くの人に受け止めて欲しい。文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞、小原篤「アニマゲ丼」でも紹介され、もう漫画好きな人なら知っているだろうけれど、あえてご紹介したい。なぜなら、田亀は誰にでも受け取れるようにストライクゾーンめがけてボールを投げているからだ。え? ボールとしたのは、エロな意味はありませんよ。あくまで比喩です、比喩。

 「弟の夫」。中身はまさしくその通りである。主人公はバツイチのノンケ男(異性愛者)弥一(やいち)。弥一と一人娘・夏菜(かな)との2人暮らしの家に、カナダ人のマイクが訪れる。マイクは、弥一の双子の弟・涼二とカナダで結婚していたという。海外に行って10年音沙汰のないまま亡くなった涼二。弥一はゲイであるマイクの存在に戸惑うが、偏見のない夏菜の意見に目を開かされ、自分の中の偏見に気付き、マイクの存在を受け入れていく。

 こう書くと、同性愛啓蒙(けいもう)漫画のようだが、田亀が上質のエンターテインメントに仕上げているのでとても読みやすい。コドモである夏菜の言葉は、知らず知らずに偏見に染まっているオトナの「常識の壁」みたいなものをことごとく壊してくれるのだ。

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