夏目漱石「吾輩は猫である」13

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  寒月と、根津(ねづ)、上野、池(いけ)の端(はた)、神田(かんだ)辺を散歩。池の端の待合(まちあい)の前で芸者が裾模様(すそもよう)の春着をきて羽根をついていた。衣装は美しいが顔は頗(すこぶ)るまずい。何となくうちの猫に似ていた。

 何も顔のまずい例に特に吾輩を出さなくっても、よさそうなものだ。吾輩だって喜多床(きたどこ)へ行って顔さえ剃(す)ってもらやあ、そんなに人間と異(ちが)った所はありゃあしない。人間はこう自惚(うぬぼ)れているから困る。

  宝丹(ほうたん)の角(か…

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