「父を探して」は何を探し出したか?(小原篤のアニマゲ丼)

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 「不在」はその存在を大きくします。はるか三千里の旅をするマルコがどうしても会えない母は、どんなに素晴らしい母なのか。コナンたちが追っても追っても正体のつかめない黒の組織のトップは、どんなに恐ろしく強大な力を持っているのか。ズバットがこんだけ悪いヤツらをやっつけても見つからない飛鳥五郎殺害犯はいったいどんな極悪人なのか。バージョン違いの作品がこんなに作られてもいまだによく分からない「人類補完計画」とは、どんなに深遠で壮大な計画なのか。天竺(てんじく)への旅の苦労を重ねるほど、あたかも掛け金が積み上がっていくかのごとく、求めるお経のありがたみは増すのです。

 19日から公開されたブラジルのアレ・アブレウ監督の長編アニメ「父を探して」は、主人公の少年が出稼ぎに出た父を探して一人旅をする物語。上記の「不在の公式」にのっとると思わせて、それを逆手に取る展開が意表を突いて面白く、そこに苦みの交じった人生哲学が感じられます。あ、ネタバレです。

 主人公のビジュアルは、まん丸アタマに毛が3本、グリグリ線を引いただけの目と、超シンプル。胴体はシャツの横シマだけで表現され、手足はハリガネのような一本線です。クレヨン、色鉛筆、切り絵、絵の具などを使い分けた背景は、カラフルで素朴な絵本の世界のよう。キャラにも背景にも、手描きの躍動感と、厚みのある手仕事のぬくもりがあふれています。

 男の子が遊ぶ自然いっぱいの…

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