前回は「新番組の秋」だったので今回は「読書の秋」。最近読んだアニメ関係のオススメ3冊をご紹介します。「宇宙戦艦ヤマト」の西崎義展プロデューサーの思い切り刺激的な評伝、「鉄腕アトム」の声優・清水マリさんのジーンと感動的な自伝、「北斗の拳」などを翻訳したフランス人トリスタン・ブルネさんの愉快な体験的オタク文化論です。
牧村康正さんと山田哲久さんによる「『宇宙戦艦ヤマト』をつくった男 西崎義展の狂気」(講談社)は、まさに待ち望まれていた1冊。業界に様々な伝説を残し4年前に事故死した希代のプロデューサーの実像に迫った読み応えたっぷりのルポルタージュですが、他のアニメ関係のノンフィクションとはかなり毛色が違う印象です。創作や制作面の話は(相対的に)控えめで、グッと重きが置かれているのは「カネと女」。そりゃま、そっち方面のスキャンダルに事欠かなかった人ですから当然ですが、共著者であるフリージャーナリストの牧村さんは実話誌編集者として山口組などの裏社会を20年にわたり取材してきた方だそうで、なるほど納得です(もう1人の著者の山田さんは西崎プロデューサーの助手を6年務めた方です)。
良家の生まれで厳格な父に反発、ジャズ喫茶の司会や芸能マネジャーからのし上がり、アニメ界に乗り込んで「ヤマト」を当てて頂点へ。豪華クルーザーに銀座での豪遊、数多くの愛人秘書を抱え、傍若無人、傲岸(ごうがん)不遜、向かうところ敵無しの独立プロデューサーはしかしポスト「ヤマト」の不発から、事業を広げて倒産、破産。クスリと銃で逮捕・服役というどん底から、執念の「ヤマト」復活、そして小笠原の海に死す……。
多くの人がその骨格を知るドラ…