空襲の経験、きちんと映画に 「火垂るの墓」高畑勲監督

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あなたは何で戦争を知りましたか

戦後70年を迎えた2015年夏、高畑勲監督(2018年4月死去)がインタビューで語った空襲の記憶とは。

 「火垂るの墓」が多くの人の心に残っていることはありがたい。テレビで繰り返し放映され、見てもらえる機会が多かったことに感謝している。ストーリーが分かっていても何度も見てもらえるのは、(主人公の)兄妹2人が生き抜こうとする姿を丁寧に描いたからではないか。

 野坂昭如さんの原作にひかれたのは、2人がいかに死に向かっていったかを閉じた世界の中で描くという「心中もの」の構造があったこと。アニメなら新しい求心力で描けるのではないかという表現上の野心が強かった。

 私自身が岡山で空襲を経験したこともある。小学4年生だった私は6年生の姉と2人だけで逃げ回った。逃げた方向に焼夷(しょうい)弾が落ちてきて、火の海の中で立ち往生した。「火垂るの墓」の2人より、もっと危険な目に遭った。自分の経験を含め、事実を事実としてきちんと描いた。

 悲惨さだけを描いたつもりはない。子どもは楽しみや自由を見つける天才。戦争中も声を立てて笑い、ふざけ合う。自然と触れあいながら遊び、日常のささいな出来事で喜ぶ。そんな姿も描いた。そういう日常を破壊する戦争は絶対に許せない。

 1988年の公開時は、「となりのトトロ」と同時上映だった。水と油のような2作を同時上映できたのはスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーの力だ。

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 一方で、日本が悲惨な目に遭…

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