「バケモノの子」にはアレがない(小原篤のアニマゲ丼)

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 細田守監督の最新作「バケモノの子」(公開中)を見てきましたが、うーん……いまいち感情移入できませんでした。子どもの成長も修行も青春も恋愛もアクションもファンタジーもありサービスてんこ盛り、映像はリッチ、メッセージは健全明朗、青い空には入道雲。――と構えは盤石なのですが、悪いところは、手垢(てあか)のついた常套(じょうとう)表現を使いすぎ、出来事を詰め込みすぎ、心情を言葉で語りすぎ。

 でも、これらのキズは心をワシづかみにするようなドラマの芯さえあればかき消せるもの。今回はその、ワシのツメの食い込みが足らなかったと言うべきでしょうか。細田監督の「サマーウォーズ」も「おおかみこどもの雨と雪」も、キズは気になりながらも私の中では愛がまさったのですが……。あ、以下ネタバレですのでお気をつけ下さい。

 両親の離婚後、一緒に暮らしていた母を交通事故で失った9歳の蓮は、渋谷の街で声をかけてきたバケモノの熊徹を追い、バケモノの街「渋天街」に入り込んでしまう。武道の達人だが粗野で自分勝手で嫌われ者の熊徹の弟子「九太」となり、ガミガミと怒鳴り合いながらも修行を積む。17歳となった九太はふとした弾みで渋谷に戻り、図書館で出会った高校生・楓に勉強を教わりながら人間界とバケモノ界を行き来する。バケモノを束ねる次期「宗師」を決める熊徹と猪王山の試合会場で、猪王山の息子・一郎彦が熊徹に重傷を負わせる。一郎彦も九太と同じ人間で、人の子はバケモノ界で育つと胸に闇を宿すという。闇にのまれ怪物と化して渋谷で暴れる一郎彦を、九太は自らの闇に取り込み我が身もろとも葬り去ろうとするが……という物語です。

 全体の構成が「ゲド戦記 影…

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