母の徘徊…深夜に何度も保護、心身は限界 認知症社会

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川口敦子 佐藤実千秋
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 深夜2時半。玄関をたたく音で目が覚めた。

 「近所で何かあったのか」。慌てて跳び起きて扉を開けた。一瞬、目を疑った。自室で寝ているはずの母(88)が、ライトを手にした警察官に挟まれて立っていた。花柄のパジャマにサンダル姿。身長147センチの体を小さく丸め、うつむいていた。

 前橋市の後藤京子さん(66)の母はるのさんの徘徊(はいかい)がこの日から始まった。2012年夏のことだ。

 いくつか兆しはあった。料理上手だったのに同じ献立が続いた。みそ汁に値札シールが浮いていたこともある。「私、ぼけてない?」と顔を曇らせていた。

 母は「大胡(おおご)館に帰る」と警察官に繰り返していた。大胡館は母の両親がかつて営んでいた旅館で、実家でもあった。今は別の建物が立ち、家から歩いて行ける。

 2度の離婚。高校生だった息子の事故死……。母は人生の試練を幾つも越えてきた。「大胡館で過ごした幼い頃が一番いい時期だったのでしょう」。「実家」に向かう母の胸中を京子さんは思いやる。

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 「家に帰らせてもらいます」…

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