夏目漱石「それから」(第九十五回)十五の三
その夕方始めて父からの報知(しらせ)に接した。その時代助は婆(ばあ)さんの給仕で飯(めし)を食っていた。茶碗(ちゃわん)を膳(ぜん)の上へ置いて、門野から手紙を受取って読むと、明朝何時までに御出(おいで)の事という文句があった。代助は、
「御役所風だね」といいながら、わざと端書(はがき)を門野に見せた。門野は、
「青山の御宅からですか」と…
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