夏目漱石「それから」(第六十七回)十二の二
代助はその夜(よ)すぐ立とうと思って、グラッドストーンの中を門野に掃除さして、携帯品を少し詰め込んだ。門野は少なからざる好奇心を以て、代助の革鞄(かばん)を眺めていたが、
「少し手伝いましょうか」と突立(つった)ったまま聞いた。代助は、
「なに、訳はない」と断わり…
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