【解説】
 きょう6月19日は桜桃忌。昭和の作家、太宰治をしのぶ日です。今回は、太宰の最晩年を紙面で振り返りたいと思います。点検するのは、行方不明になった太宰の捜索を報じる記事。遺書を残して妻以外の女性と家出し、捜索願が出されてから2日後の紙面です。さっそく見てみましょう。

 見出しに大きく「太宰治氏情死」とあります。本文の出だしにも「二人の死体を捜索している」とあります。ここだけ見ると、太宰がすでに亡くなってしまったかのような印象を受けます。記事を最後まで読むと、現場の状況から2人が心中を図ったと警察が認定。玉川上水での捜索が始まったという内容でした。数日後に2人は遺体で発見されますが、記事が掲載された6月16日時点では安否は不明でした。もしかしたら誰かに助けられ、ひっそりと静養しているかもしれません。死亡したと勘違いされるような見出しはやめた方がいいでしょう。また、本文の出だしも、「二人の行方を捜している」くらいの表現にするべきでしょう。

原文どおりに表記することを原則としますが、読みやすさの観点から

・漢字の旧字体は新字体に
・句点(。)を補った方がよいと思われる部分には1字分のスペース
・当時大文字の「ゃ」「ゅ」「っ」等の拗音(ようおん)、促音は小文字に

等の手を加えています。ご了承ください

有山 佑美子(ありやま・ゆみこ)

横浜市出身。大学では朝鮮文学を専攻していました。他紙に5年ほどいた後、2005年に入社。北海道報道部、千葉総局、文化くらし報道部を経て13年に東京校閲センターへ。趣味はホットヨガで特技はアロマテラピー。