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「伝家の宝刀」の元の意味は「家に代々伝わる大切な刀」。ここでは「切れ味は鋭いが、めったなことでは抜かない。いよいよという時以外は使わない」という意味で使っています。だから当時の適法な労働運動や社会運動が取り締まりの対象になり抑圧されるような心配はありませんよ、と説明します。これは本当だったのでしょうか。
まず、この記事を現代の校閲記者の目で点検してみます。見出しには「十一日から実施」とありますが、同じ日の朝刊2面で法の解釈を説明した「治安法釈義」では「五月十二日から施行せられる」とあり、現在の定説も「5月12日施行」となっていますので、「実施」というあいまいな表現でなく「十二日から施行」という表現とすることを提案します。本文も含めて直してもらいましょう。なお「警視庁当局者」が誰かは分かりませんでした。
この記事に続く「純真な運動を傷つけはせぬ」。見出しに「川崎警保局長の談」とあります。こちらは調べてみると、当時の内務省警保局長だった川崎卓吉と推定されます。フルネームになるよう「卓吉」の挿入を提案します。現在で言えば警察庁長官に相当し、川崎局長は後に文部大臣も務めました。
原文どおりに表記することを原則としますが、読みやすさの観点から
・漢字の旧字体は新字体に
・句点(。)を補った方がよいと思われる部分には1字分のスペース
・当時大文字の「ゃ」「ゅ」「っ」等の拗音(ようおん)、促音は小文字に
等の手を加えています。ご了承ください
1958年生まれ、群馬県出身。84年入社、名古屋で紙面編集、学芸部記者などを12年ほど転々。名古屋、東京、大阪校閲部を経て08年から東京校閲センター。1万歩ウオーキングが日課。最近は白土三平「カムイ伝」と中森明菜にはまっている。
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