【解説】


 18日までブラジル・リオデジャネイロで開かれていた障害者スポーツの祭典、第15回夏季パラリンピックで、日本勢は24個のメダルを獲得しました。日本との時差は12時間。能力を極限まで高めた選手の活躍に、寝不足の人もたくさんいらっしゃったと思います。リオ大会は、出場選手の「アスリート」としての側面に今まで以上に焦点があたり、テレビ中継も大幅に増えました。

 このコーナーでは4年後の東京五輪・パラリンピックに向け、1964年に行われた東京パラリンピックの閉会式前の記事を現在の校閲の視点で点検してみます。

 「笑いと感動の連続」「明るい外国選手」という見出しからも分かるように、全体的にはスポーツ選手の頑張りを伝えようとする温かみのある記事ですね。でも健常者目線で書かれているところがちらほら。

 「思わずジーンとさせる感動的な場面がたびたびあった」という文のすぐ後で紹介されている下肢障害の競泳の女性選手。「ブクブクと沈みかけては懸命に浮ぶ」「何度目かブクブク沈みかけたとき」と描写しています。その後段では「寝たままバーベルを持上げる重量あげは、痛ましくもあったが、顔を真赤にして百キロ以上も持上げる選手たちに拍手がわいた」。「ブクブクと」「痛ましくもあったが」という修飾表現は、選手たちの障害ゆえにできないことに焦点を当てて、哀れんでいるように感じます。今、私が点検したら抜くことを提案するでしょう。

 さらにこの記事には、主役のはずの選手らの名前、コメントが一つもありません。意気ごみや感想などひとことでいいからほしいですね。

原文どおりに表記することを原則としますが、読みやすさの観点から

・漢字の旧字体は新字体に
・句点(。)を補った方がよいと思われる部分には1字分のスペース
・当時大文字の「ゃ」「ゅ」「っ」等の拗音(ようおん)、促音は小文字に

等の手を加えています。ご了承ください