【解説】


 今日から6月、夏も盛りに向かっています。日焼け止めや日傘、サングラスなどの紫外線(UV)対策用品が店頭で目立つようになりました。ただ、気をつけていても、ついうっかり日焼けはしてしまうものです。今回紹介するのは、焼けた肌の手入れについての記事です。それでは点検してみましょう。

 見出しや本文に「陽ざし」「陽やけ」とあり、「ひざし」「ひやけ」と読ませています。また3段目では「秋の日は夏の陽よりも強く」と「日」を使っています。「陽」には常用漢字表で「よう」という読みしかなく、現在の新聞では「ひ」とは読みません。「日ざし」「日焼け」と、「日」にそろえましょう。3段目の「夏の陽」には「陽」に「よう」とルビがついていますが、これは漢字「陽」とルビ「ひ」が一体になった活字を拾おうとして、誤って「よう」というルビがついた活字を拾ってしまったのでしょう。これも今なら「夏の日」としてもらいます。

 「葡萄・ぶだう」「シミ・汚染」などと、一つの言葉が漢字だったりひらがなだったり、表記がばらばらなのも気になります。統一してもらいましょう。

 「トマトをつぶして皮膚になすりつけ、石鹸(せっけん)で洗い落とすとシミなどが不思議にとれる」などとあります。現代では、シミを除去するにはレーザー治療などの医療行為が行われます。トマトだけでシミがとれるかは疑問です。効果があるとしても、「シミに効果がある」「シミが薄くなる」などの表現の方が適切ではないでしょうか。このころは、つぶしたトマトやイチジク、ブドウなど食べ物を顔に塗る美容法が一般的だったらしく、紙面にたびたび出てきます。卵の白身や黒砂糖、レモンの搾り汁なども人気でした。

 この記事で最も気になったのが、秋は夏よりも日差しが強く、より日焼けしやすいと注意を呼びかけていることです。理由として、夏は空気中の湿気が紫外線を吸収するけれども、秋は湿度が低いため紫外線が水分に妨げられずに地上に降り注ぐ、などを挙げています。本当でしょうか。その年の気候にもよりますが、気象庁では、一般的に紫外線は夏に多くなり、日本国内では7~8月が最多になるとしています。「秋になっても日焼けする可能性がある」程度の表現が正しいように思います。

原文どおりに表記することを原則としますが、読みやすさの観点から

・漢字の旧字体は新字体に
・句点(。)を補った方がよいと思われる部分には1字分のスペース
・当時大文字の「ゃ」「ゅ」「っ」等の拗音(ようおん)、促音は小文字に

等の手を加えています。ご了承ください

有山 佑美子(ありやま・ゆみこ)

横浜市出身。大学では朝鮮文学を専攻していました。他紙に5年ほどいた後、2005年に入社。北海道報道部、千葉総局、文化くらし報道部を経て13年に東京校閲センターへ。趣味はホットヨガで特技はアロマテラピー。