【解説】

 ゴールデンウィークも真っただ中。今年は暦通りに休める人なら4月29日から5月8日まで、途中5月2、6日の平日を挟んで3連休、3連休、2連休と続きます。旅行、帰省、あるいはボランティア活動など思い思いの休日を過ごされていると思います。

 今回は1962(昭和37)年のゴールデンウィーク(黄金週間)の記事を取り上げます。

 現代の校閲記者の視点も交えて読んでみましょう。最初から2行目に「東京地方は水銀柱もぐんぐん上がって」とあります。「水銀柱」は水銀温度計。気温がぐんぐん上がったということですね。最近は温度計もデジタル式が増えて、水銀柱はあまり見かけなくなりました。「箱根バイパスをはじめ主な道路も車の行列」とありますが、今なら行列してもスムーズに流れていれば特に記事になりません。国土交通省の「自動車保有車両数」によると60年度末の保有自動車数は340万台(2015年度末では約24倍の8067万台)。60年代から交通渋滞の記事も紙面に載り始めてはいますが、この時はどこにどれだけ渋滞が発生したのか把握できなかったか、あまり渋滞が目立たなかったのかもしれません。

 「箱根・伊豆」の項に出てくる「サボテン公園」は、正しくは「伊豆シャボテン公園」。「レジャーよりも〝苦行〟」の見出しの後ろの記事では、「子ども」「子供」と表記がばらついているのが気になります。どちらかにそろえましょう。

 朝日新聞の紙面に初めて「ゴールデンウィーク」の言葉が登場したとみられるのは、53(昭和28)年4月29日付の記事。「休み続きの五月第一週(29日-6日)は毎年映画界にとって最大のカキイレ時。そのゴールデン・ウィーク(黄金週間)の陣容は……」とあります。

原文どおりに表記することを原則としますが、読みやすさの観点から

・漢字の旧字体は新字体に
・句点(。)を補った方がよいと思われる部分には1字分のスペース
・当時大文字の「ゃ」「ゅ」「っ」等の拗音(ようおん)、促音は小文字に

等の手を加えています。ご了承ください

上田 孝嗣(うえだ・たかつぐ)

1966年生まれ、福岡県出身。91年入社、東京本社校閲部、仙台、函館支局、東京本社地域面編集などを経て2012年から校閲センター。食と酒の美味探求とスキューバダイビング、旅好きなアラフィフ。共著に「パイプ大全」。