【解説】


 今年も高校野球の夏がやってきました。19日には沖縄大会で興南が優勝、甲子園に出場する全国49代表に一番乗りを果たしました。この夏の全国高校野球選手権大会は、前身の全国中等学校優勝野球大会が始まってから、ちょうど100年にあたる記念の大会。今回の昔の新聞点検隊では、最初の大会にまつわる当時の記事をご紹介します。

 冒頭は、ちょうど100年前の1915(大正4)年7月1日の大阪朝日新聞1面に載った記事。社告と呼ばれる、社の主催イベントを告知する体裁です。表現は少しだけ変わるものの、なんと4日連続で1面に掲載された大きな記事ですが、いまの視点で中身を校閲すると直したい表現がいくつかあります。

 まず野球が「男性的」であるという点。女子プロ野球チームもある現在、野球が男性だけのスポーツであるように書くべきではありません。筆者が言いたかったことを想像するに、「力強い」「躍動感のある」といった言葉で表現できるのではないでしょうか。

 また、全国から集めるという「代表的健児」。「健児」は「血気盛んな青少年」(新明解国語辞典)ですが、最近はあまり使われなくなりました。今なら「若者たち」「野球に打ち込む生徒ら」ではどうか、と提案してみます。

 ところで野球の興味(おもしろさ、といった意味でしょうか)、技術が「著しく我国民性と一致」する、とはどういう意味でしょうか。大会が開幕する8月18日付のこれまた1面トップに載った、主催者としての宣言文ともいえる「全国優勝野球大会に就(つい)て」の記事を見ると、当時の野球のイメージがよく分かります。

原文どおりに表記することを原則としますが、読みやすさの観点から

・漢字の旧字体は新字体に
・句点(。)を補った方がよいと思われる部分には1字分のスペース
・当時大文字の「ゃ」「ゅ」「っ」等の拗音(ようおん)、促音は小文字に

等の手を加えています。ご了承ください

薬師 知美(やくし・ともみ)

1983年兵庫県・淡路島出身。09年入社、東京校閲センター。2年間の千葉総局勤務を挟み、関東暮らしが長くなっても、口を開けば関西弁。鉄道のない島で育ったため、大人になってテツ子の道へ。地図とビールを片手に鉄道旅をするのが好き。