朝日新聞社には「ジェンダーガイドブック」という社内向けの小冊子があります。この本は性別や性的指向による差別や不平等を助長する記事を書かないために、どういった点に気をつければ良いかを提言する手引です。

 初版が発行されたのは2002年ですが、それから15年が経ったため、現在改訂作業が行われています。この15年で変わったことも変わらなかったこともあります。たとえば男女間の賃金格差はカタツムリの歩みのようにゆっくり縮んでいますが、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考えに賛成する人は4割から5割の間を揺れ動き、夫の家事時間はほとんど増えませんでした。

 一方で、東京都渋谷区などが同性カップルを「パートナー」と公に認め、文部科学省が性的少数者の児童生徒に配慮するよう求める通知を出すなど、性的少数者に関する認識も急速に広まっています。

 こうした状況を踏まえて、今回の改訂では「『女性ならでは』と書いて何かを説明したつもりになっていないか」「『性的少数者』と『LGBT』は必ずしもイコールではない」などの例を挙げながら、参照事例を新しくしたり、性的少数者を取り巻く問題への言及を大幅に増やしたりしました。