民間企業で部長を務めていた男性が育児休業を4カ月取得したところ、復帰後に職場で干され、退職に追い込まれたという1月16日付の記事に衝撃が広がっています。

 育児・介護休業法は子どもが少なくとも1歳になるまで、父母ともに育児休業を取得する権利を保障し、育児休業を取得したことによって会社が不利益な待遇をすることを禁じています。

 それなのに、この会社が法律違反をいとわず、有能な社員を失う経済的不利益を甘受してまでこの男性を排除したのは、男性の育児休業取得が、法律より上位にある「社会の掟(おきて)」に背くと判定したのだと解釈できます。

 たとえば幹線道路を走る車の多くが制限速度を守っていないように、法律は存在するだけでは必ずしも効力を発揮せず、その内容が正当だと社会が認めることで初めて実効性を持ちます。

 男性の育児休業取得が世の中で正当なことと見なされ、育児・介護休業法が十全の効力を発揮するまでに、あとどれだけの涙が必要なのでしょうか。


※「最近の記事から」は今回で終了します。今後は人権にまつわるコラムを原則として毎月第1金曜日に掲載します。なお、2月は第3金曜日の掲載を予定しています。