先日の米大統領選で、大方の予想を覆し共和党のドナルド・トランプ氏が当選しました。
選挙戦では人種差別的・性差別的な言動が強い批判を浴びましたが、マイノリティーを敵に仕立て上げる手法によって、「自分たちは見捨てられている」と暗い情念を募らせてきた白人中間層を動員することに成功しました。

 得票率は民主党のヒラリー・クリントン氏をわずかに下回っていますが、それでも投票した人のほぼ半分が差別を称揚するトランプ氏を支持したということは、アメリカが「差別は正しい」とのメッセージを発したことを意味します。

 分断と敵対を政治資源として動員する手法は世界的に流行していますが、世界に冠たる人権の国だったはずのアメリカがその最先端に躍り出たことの影響力は、他の国の比ではありません。トランプ氏の当選を受けて、米国内ではすでにムスリムやヒスパニック系へのヘイトデモが発生したことが伝えられています。

 ますます野蛮さを増していくように見える21世紀の現代ですが、先人たちも厳しい時代を乗り越えてきました。私たちは今何をすべきか、私たちに何が出来るのか、改めて問われています。