この夏、ブラジル・リオデジャネイロでおこなわれたパラリンピックは、これまで以上に新聞やテレビなどで大きく取りあげられ、注目されました。障害者に対する意識や社会進出の状況は、以前と比べ大きく変わっています。

 これから社会に踏み出す特別支援学校の生徒たちに、働くとはどんなことなのかを知ってもらおうと、障害のある社会人の先輩たちが企画した職場見学ツアーが10月18日、東京・六本木のバークレイズ証券で開かれました。参加したのは東京都内の特別支援学校高等部9校からの10人。担当教諭は「経験を広げ、将来への期待感やあこがれを持つ機会になれば」と話します。


 「わっ重い!」

 バークレイズ社員で、リオパラリンピックで銅メダルを獲得した車いすラグビー日本代表の島川慎一さんからメダルを受け取ると、生徒たちから驚きの声と歓声があがりました。

 高等部1年の宮下紅海(くみ)さんは「リオの重みはんぱない!」と喜び、「日本を背負ってたんだなと感じました。努力の重みを実感しました」と話しました。

 職場見学ツアーでは、障害のある社員や外国出身の社員との交流のほか、バークレイズがどんな仕事をしているのかの説明や、面接の練習、島川さんが実際に働いている部署の見学などがおこなわれました。

 ツアーに参加した東京都立町田の丘学園の森山知也主任教諭は、「障害のある人が活躍しているのを見たり、今まで考えてきたことを交流のなかで話したりすることで、生徒たちが『こういう風になれるのかな』『なりたいな』と将来への期待感やあこがれを持てたらいいなと思っている」と話します。

 「今回で職場見学ツアーは5回目だが、生徒たちの様子がふだん学校にいるときとはやっぱり違う」と森山さん。「障害者雇用も体験の場も広がってきていると思うが、障害のある生徒たち、とりわけ車いすの生徒たちは行動範囲が比較的狭いし経験の場も少ないというのがまだまだ現実。ラッシュの時間に電車に乗ることも普段はしない。この時間、このくらいの人がいるんだ、こんなに大変なんだと経験するのも、大事だと思う。こういう機会を利用して経験を広げていきたい」と語ります。

 

青山 絵美(あおやま・えみ)

広島県出身。2011年に入社し、以来、東京本社校閲センター勤務。大学では、日本古典文学を学び、アメフット部で青春を燃やした。猫をこよなく愛するが、20歳を過ぎてアレルギーを発症。悲嘆の日々をおくる。