7月にサービスが始まってから7日間でダウンロード数が1千万を超え、ひと月ほどで1億に達したスマートフォン用ゲームアプリ「ポケモンGO」。現実の地図を利用したAR(拡張現実)技術によるゲームの新しい楽しみ方が広まる半面、人気の過熱でプレーヤーのマナー問題も起きました。今回はポケモンGOを手がかりに、ゲームをとりまく表現と人権の関係について考えてみます。

■ポケモンシリーズのこころみ


 もともとポケモンシリーズはロールプレイングゲーム(RPG)として1996年に発売されたゲームボーイ用「赤・緑」が初めての作品で、携帯型ゲーム機の手軽さを生かしたモンスター交換システムなどが人気を呼んで続編が次々に製作されました。最近では2013年発売のニンテンドー3DS用「X・Y」が全世界で約1500万本を売り上げ、そのうち3分の2は北米や欧州が占めています。

 「赤・緑」では主人公は男の子でしたが、00年の「クリスタル」で女の子も選べるようになり、「X・Y」ではさらに肌や瞳などの色も選択できるようになりました。「特定の人種を表現しようというわけではなく、お客様の好みに応じられるよう多くの選択肢を提供したい」(ブランドを管理している株式会社ポケモンの広報担当者)という考えが、世界中の幅広い層に受け入れられているようです。ちなみに「X・Y」は日本語、英語など7言語に対応し、さらに今秋発売予定の最新作「サン・ムーン」では中国語も追加されることが発表されています。

 ポケモンでの選択肢は、ポケモンGOでさらに広がりをみせました。ポケモンGOは日本で開発されてきたこれまでのポケモンシリーズと違い、米ナイアンティック社が手がけています。「X・Y」では主人公の容姿を設定する画面で「キミは男の子? それとも女の子かな?」というメッセージだったのが、「GO」では「あなたのスタイルを選んでください」と、性別に言及していません。この違いについてポケモン社の広報担当者は「『スタイル』という言葉は、ゲーム内で操作するキャラクターが自分自身ではなく、あくまでもアバター(分身)であることをより分かりやすくするため」といいます。最近では国内の人気シリーズ「ドラゴンクエスト」(スクウェア・エニックス)や「モンスターハンター」(カプコン)なども、主人公の性別や容姿を選べるのが定番になっています。

金子 聡(かねこ・さとる)

1978年生まれ、横浜市出身。2003年入社、東京本社校閲部。11年秋から2年半ほどデジタル部門へ異動。その後大阪本社校閲センターを経て、現在は東京本社校閲センター。学生時代に経営工学や情報工学をかじった理系で、趣味はゲームとロードバイクでの輪行。