5月4日の朝日新聞にことばの広場「隠語化される差別」が載ってしばらく経ったころ、東京都内の小学校に通う5年生の次男が、校内で「がいじ」という差別語が使われているのを聞きつけました。友達同士の言い争いから出たもので、次男はこう問い掛けたそうです。「どういう意味か知っているの?」

 友達の答えはこうでした。「知っているよ。この世にいらない人のことでしょ」

 言われた側の気持ちについて「全否定されたと感じたのではないか」と代弁したのは同僚の記者です。四半世紀前の北海道で他校の児童が使っているのを聞いたことがあり、当時を振り返って「相当なインパクトがあった」と話してくれました。

 「がいじ」という言葉は「障害児(しょうがいじ)」の後半部分を取り出したものですが、同僚は「略すことで意味が分からなくなり、聞いてもすぐに漢字に変換できない」という特徴を挙げます。

 仲間内でしか通じない「隠語」となったことで、パッと聞いても使ってはいけない言葉だと分かりません。「だからこそ、この言葉は何十年も生きのびてきたのではないか。陰湿な言葉だと思う」。また、身体や知的に障害のある子を指して使うというよりも、「おばかな行為、おかしな言動をする友人に対して、ちゃかすように使われていた覚えがある」そうです。

 漢字で書けば「害児」であり、害のある子どもということになります。略したことで、元の言葉よりも悪い意味になっていますが、「重い言葉にしては、安易に使われすぎている」と指摘します。

 ところで、インターネットで検索するとカタカナ書きの「ガイジ」が出てきます。ひらがな書きはあまり見かけません。どのような違いがあるのでしょうか。

菅井 保宏(すがい・やすひろ)

1969年、岐阜県生まれ、教育学部生物科卒。学生のころ、自然現象を物語としてとらえることに興味がありました。興味だけで終わっていましたが。課題のリポートを出すようなつもりで取り組んでいます。