■災害は忘れる前にやってきた

 昨年は阪神・淡路大震災から20年、そして今年は3月に東日本大震災から5年の節目を迎え、新聞やテレビでも防災・減災について多くの連載や特集が組まれました。地震や津波だけでなく、豪雨や土砂災害、火山活動、原発事故など多くの災害リスクを抱えたこの国で、将来の災害にどう備え、避難や生活再建はどうすればいいのか――誰もが身近なこととして考える機会が続いていたそんな矢先に起きたのが、4月の熊本地震でした。


 新聞各紙では過去の教訓から、二次災害への警戒やエコノミークラス症候群などの災害関連死対策、避難生活の注意点、生活再建に向けた動きなど、各段階で必要な情報を先回りして伝える姿勢が見られました。中でも障害者や高齢者ら、いわゆる「災害弱者」については早い段階から大きく取り上げる報道が目立ち、民間の支援活動も活発だった印象を受けました。

 国は阪神大震災や東日本大震災の後、避難や避難生活で取り残される人が出ないよう、法改正や様々なガイドラインの整備を進めており、また市民のレベルでも「どういう人がどういう情報や支援を必要とするのか」という具体的な知識やノウハウが共有、蓄積されつつあります。

 想定通りに運用することの難しさや、財政難や高齢化で支援計画づくりに苦慮する自治体が多い現状など、多くの課題も残っていますが、平時からの問題意識や備えは少しずつであっても災害時に確実に生かされる、ということを改めて実感しました。

 熊本地震の報道で特によく目にしたキーワードは、「福祉避難所」と「外国人被災者」。福祉避難所は阪神大震災後の1997年に災害救助法に基づく指針で初めて位置づけられ、2007年の能登半島地震で第1号が設置されましたが、今回初めて知ったという人もいたのではないでしょうか。外国人被災者への支援については、4年後の東京五輪に向けて、平時だけでなく災害時にも通用する国際化の必要性が意識されてきているようです。多言語での情報発信だけでなく、通訳がいなくても可能な「やさしい日本語」への言いかえをする動きも広がりつつあります。

細川 なるみ(ほそかわ・なるみ)

1982年生まれ、豪州などあちこち育ち。大学では比較刑事法専攻だったが、語学好きが高じて校閲記者の道へ。06年入社、東京校閲センター所属。大阪校閲も2年間経験。オフの楽しみは美術館めぐりとテニス観戦、好きなご当地キャラは「ひこにゃん」と「しまねっこ」。